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 ■ 事件簿詳細
 木を隠すなら森の中…出会い系から始まった不倫の末路

バレない隠し事など、まずない。周りの目、そして何よりも自分の心の目が隠し事から目をそらさせてくれない。自分が寂しいときだけ慰めてくれる女がほしかった…そんな都合のいい女など、滅多にいないのに。



バレない隠し事など、まずない。周りの目、そして何よりも自分の心の目が隠し事から目をそらさせてくれない。自分が寂しいときだけ慰めてくれる女がほしかった…そんな都合のいい女など、滅多にいないのに。

家族経営の自営業、勤務地と居住地が一緒。大恋愛の末の結婚とはいえ、四六時中時間をともにしているといい加減互いに飽き飽きしてくるのもうなずける。

宮守武蔵(仮名)46歳、妻・幸子(仮名)42歳。岩手県で精肉店を経営している。一姫二太郎の子供たちも各々東北圏内の大学に進学している。夫婦水入らずの生活といえば聞こえはいいが、その実、大きな問題が頭をもたげていた。
武蔵の浮気だ。若い頃ももてたが、年をとるに連れて渋みが増し、円熟した男のかっこよさを兼備えていた。飲みに行けば、店の女のコをお持ち帰りするのはよくあることだった。肉屋といえども接客業。仕事で培った駆け引きは恋愛にもそのまま生きていた。
携帯電話をもつようになってから、店にいることがめっきり少なくなった。肉を仕込み、冷蔵庫に保管、惣菜用に下ごしらえの必要なものを適当に済ませた後、以前であれば幸子さんと一緒に家にいて茶飲み話や、週末の旅行の話などしていた。だが、携帯をもってからはすっかり出会い系にはまり、浮気もひどくなった。肉の発注も仲のいい同業者にまかせるようになっていた。

幸子さんは悔しさを紛らわせるように、惣菜の改良にいそしみネットで手作りハムの販売などを手がけるようになっていった。武蔵の浮気も今に始まったことではない、放っておけばいつかまた自分の元に戻ってくる。大手スーパーにはできない、いい商品を作って販売することに専念していた。だが、武蔵が幸子さんの元に戻る事はなかった。

清水明子(仮名)さん・23歳は、県の沿岸部にある老人ホームで働いていた。当たり前の話だが、明子さんが相手にするのは家から見放されたお爺さん、お婆さん。ボケてしまったが故に老人ホームに預けられた人も少なくない。朝ご飯をたった今食べたばかりなのに食べていないといいはる78歳のお婆さん、入って間もないので家に帰りたいと泣き叫ぶ69歳のお爺さん。
先輩たちは慣れたもので適当にあしらっているが、新米の明子さんはな慣れずにほとほと疲れていた。セックスが大好きで学生時代に男を食いまくっていた明子さん。身体が疼いて仕方がなかった。そんなときに携帯の出会い系サイトで男と約束を取り付けて遊ぶようになていた。その中に武蔵がいた。

武蔵もセックスが好きだった。また、娘たちと同じ年代ということもあり、明子さんと一緒に街を連れ立って歩くことを好んだ。不定期な明子さんの休みに、自営業で仕事を幸子さんにまかせっきりの武蔵。時間の融通はなんとでもなった。明子さんに限らず、武蔵はこれまでも己の性欲のために、よほどの事がない限り時間を合わせた。
女を心地よくさせる事にもたけていて、セックスがうまいとくれば女も本気になる。だが、飽き性でもある武蔵は女が本気になる頃には、もう一方で浮気の準備を始めている。熱しやすく冷めやすい、根っからの浮気体質の男だったのである。

明子さんは多少ファザコン気味だったようだ。高校時代に父親を亡くし、武蔵に父親の影を見ていたのかもしれない。二人でいる時、お父さんと呼ばれた事があると武蔵は法廷でもらしている。正直、いろんな事が面倒になってきていた時、武蔵に魔が差した。

明子さんの家で夕飯をとった後のことだった。貴重面な明子さんは食事が終わった後、すぐに食器を片付けないと気の済まないタイプだった。食欲も満たされ、後は性欲のみとなった武蔵は片付けをしている明子さんに年甲斐もなくじゃれついた。バランスを崩した明子さんの手の食器から、サラダのドレッシングが床にこぼれ落ちた。物が汚れる事が嫌いな明子さんは烈火の如く怒り、床を拭きはじめた。

気づいたら武蔵は明子さんを背後から出刃包丁で刺していた。普段捌いている牛や豚にはない、独特の感触がしたという。血しぶきを浴びながら、必至に自分を落ち着かせようと息を整えて武蔵は一気に明子さんの解体を始める。幸い車の中には予備の業務用タッパーが入っている。手際よく明子さんをタッパーの中に詰めていく。
武蔵は包丁を手に持つという事が普通であった。職業柄それを手に持っていると安心する。カッとなった自分と安心する自分とがクロスオーバーして、明子さんに身体ごとぶつかっていってしまった。

だが、なぜあれほど冷静になれたのだろう。包丁一本で人体を解体したのだ。いくら肉屋で、どの関節をどう切り離せば簡単に解体出来ると知りつつも、あまりの自分の冷静さにあとで背筋が寒くなる。

ジュブジュブと血が沸きあがる。ビニールの上で作業をしても、その血は四方八方に飛び散っていく。それでも彼は冷静であった。乳房の上から包丁を入れ、丁寧に心臓を取り出す。あたたかい。まだ少しドクドクとしている。もはや女ではない。肉と血と脂肪の塊である。ニヤニヤしてしまう。肉の解体で一番の醍醐味だと思っていた人間の解体、武蔵は常々暗い心で包丁を持っている時、生きた物体をそのまま解体したいと思っていた。

包丁は血でヌルヌルした。すべてを拭き取るのに3時間以上もかかった。タッパーは大型のもの15個にもなり、明子さんが分散して入っていた。
黒いゴミ袋に包み、明子さんを車に詰める。途中コンビニで保冷剤変わりに氷を買っている。タッパーの回りに氷を詰めて自宅に戻る。幸子さんに怪しまれてはいけないと、その夜は明子さんを車に置いたまま武蔵は眠りについた。


幸子さんは大型の冷蔵は滅多に空けない。惣菜用に小型にカットしたものが入った小型の方を使っている。仕込みから帰った武蔵は大型の冷蔵庫に明子さんの入ったタッパーを保存する。これで安心…と武蔵は胸を撫で下ろした。

だが、人が一人いなくなって事件にならないわけがない。地方新聞ではこの失踪事件を大きく扱った。携帯電話から武蔵の名前も容疑に上がった。床に残る血の痕跡、精肉店の親父、そのような点と線が結びついていった。これだけは死者が呼んでいると考えるしかない。普段は開けない大型冷蔵庫の扉が幸子さんを呼んでいたというから不思議だ。

武蔵が仕込みに出かけた後、幸子さんは意を決して冷蔵庫を開けた。奥に見たこともない包みがあった。貴重面な武蔵にしては荒い梱包、そして何よりも外装がゴミ袋。引きずり出して中身を見る。そこには切り刻まれて血まみれになった女の肉の塊があった。

ほんの少し自分に気持ちを慰めてくれる女のコと遊べれば良かった。だが自分の欲求を満たしてくれればいいだけで、本気になられるのは迷惑だった。面倒くさくなって、こんな酷い事をしてしまって悪かったと思っていると語っているという。今、宮守精肉店は閉店となり、幸子さんは武蔵が浮気をしている間に磨いた惣菜の腕とネット販売の技術をいかして北海道で生活しているという。



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